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詩的散文 Ⅸ~プルースト/失われた時を求めて~ボードレール/オーラ
ボードレールを感じるに相応しい
もう一人の文豪
プルースト・・・
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彼もまた
”オーラ”に拘り続けた
偉人でありました。

経験の奥深に潜むある大切なもの
無意識の記憶の底に
沈静している精神のdiamond
それが
香りを切欠に
或る時、鮮明に浮かび上がってくる

sceneの残光。

言葉には名状しがたいこの概念をして
ベンヤミンは
ベルグソンの持続理論を借り
人間の原体験そのものとパラレルである
と説明していました。

それは知的操作によって対象化される以前の
生の動きそのものであり
生きることの有様・・・
連続する時間のなかで
人間の原経験が放つ光であります。

プルーストの大著”失われたときを求めて”
そこに登場する”香り”
それは
心の奥底まで浸透してゆき
深き扉の先に蔵置される
そして或る”香り”を契機に深層心理から呼び覚ます
記憶の糸口となる。
そこから
かつての命の営みそのものが
得も言われぬ現実として眼前に立ち上り再現される。

そんなプルーストが
ボードレールをして
ーーボードレールの時間は、妙に崩壊している。
      ほんの僅かな時間が
          生に於いて重大な意味を持つ時間となるーー


ここでの”崩壊している時間”とは、
生きた持続から切り取られた
独立して存在し得る時間を
謂うものでしょう・・・。

知的認識の対象となるような時間と申しますか
近代的な科学の枠組みとしての時間に
ボードレールは敬意を払いません。
彼は、あらゆる時間を超越した”精神の真髄”を重んじたんですね。
それはそれだけで、完結した事象であり
他のそれとの因果や運動の関係で結ばれておらず
時間から屹立した存在。

彼のいうコレスポンダンス
それはこの”独立不羈のこと”が
奏でるシンフォニーとも謂える類のもので
そこに含まれている総ては
知識ですとか、知性ですとかに
把握されるようなレヴェルにはない
より高次の
成熟した感性が醸造してきた時間
その狭間から僅かに垣間見えるそれ・・・

但しボードレールの事物の時間は
痛々しいほどの疼きを伴うもので
ともすれば
享楽的のようでありながら実はそれとも違う。

”痛み”って”快感”なんかよりも
すっと生きている実感を
齎すもの・・・
それは、
”passion”的な
極めてパッション的な・・・。

ベートーベンのピアノソナタ第23番 Appassionata
アパッショナータは通称”熱情”と訳されてます。
英語のpassionは、
ラテン語passioから来ており
passioは、動詞patiorの名詞形なんですね。
この単語のニュアンスが凄すぎて。
良くも悪くも影響を受ける、受容するという意味で
激情的意味合いさえも含まれています
ですからイエスの磔刑
その十字架上の死、その受難をしてパッションと。

人の心を揺さぶる
生きていることを痛いほど感じさせるそれが
時に”追憶”という枠組みの中から
ダイレクトに訴えかけ
魂の震えを呼び起こすんですね。

あらゆる過去は、洩れなく歴史的データに組み込まれますが
それとは別次元の現象です。
プーシキンにゴーゴリ、ホフマン・・・
要は
意識のフレームを超えた世界
無意識のまま心の深淵に沈殿している世界を
描出した作品
文学でも音楽でも美術でも
そうした芸術は
私の心を捕えて離しません。

非歴史的な時間
祝祭の時間
ボードレールにおけるオーラは、
ここから齎される
(苦悩にも似た)躍動の耀き・・・。

かつてのパリに溢れ
今や
失われ行くオーラ
掛替えのないそれを
永遠なるものにするため
命を賭した作品へのエネルギー
それが
ボードレールの詩業といって差し支えないのかとも思っています・・・。

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ーー詩人が言葉をあやつるのでなくて、言葉が詩人を動かすのだーー
                             ~シフ・グロッキー

























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テーマ:芸術・心・癒し - ジャンル:学問・文化・芸術

【 2013/06/11 08:37 】

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