FC2ブログ
林檎の樹/ゴールズワージー~月の輝く夜に
DSC_0244_20160112175443425.jpg



ーー黄金なる林檎の樹
      美しく流るる歌姫の声ーー
            ~エウリピデスのヒポリタス

こちら英国ウェールズの小説家
ジョン・ゴールズワージーの手による
”林檎の樹”からのepigraphです。
この後には
金色に映える林檎の実・・・
と続いてゆくのですが。

         *

天上から人間たちを動かすのは
愛の神アフロディテの絶対的な力
そして、アフロディテを崇めるフェードラはヒポリタスを愛しましたが
純潔を貫くためヒポリタスはその愛を斥けます
それによりフェードラは自ら命を絶ってしまう。
そこで
その報いを受け(愛の誠実さ故に)窮地に陥るヒポリタスを救ったのが
美しき月の女神 アルテミス・・・・・・・・。

         *

かつてこうしたギリシア神話の悲劇性を見守るのは
いつの時も古代ギリシアの人々だったんですね。

黄金なる林檎という果実が撓わに実る楽園を夢見ながら
彼らは胸の痛みを癒した
そんな神話に擬えて
ジョンはこの物語を織り成したのでしょうか。

         *

透明感のある筆致が齎すこの悲劇性。
敢えて深刻に拠らない描写を執るがため
垣間見える哀しみを
選り一層際立たせるというその手法が
受け手のこころに”或る余韻”を刻印させる
そんな構成になっています。

         *

イギリスの田園風景
その詩的表現の美しさ

ーー小川はさらさらと音をたてて流れ、月は水浴び場の上に、
青みがかった鋼色の光を投げかけていた。
彼はもう一度、ライラックの陰にじっと佇んだ。
ここでは、小川のさざめきではなくて海の音が、
夜の声だったーー

そのカタチは様々でも
愛するひとを切に想う気持ちは
時代を超えて近しいもの
結え永遠に戻ることのない
ふたりの逢瀬最後の夜の情景描写を
ここに置かせて戴きます。


ーー(彼は)そっと前庭を通り抜けて果樹園に降りていった。
ちょうどいま出たばかりの月は本当の黄金色をして
丘の向こうに輝きわたり
あかあかと力強い見張り番の妖精のように
まばらに葉をつけたトネリコの枝枝の間からのぞいていたーー

 





※こちらの作品
あまりに英国的(階級意識)と謂えばそうなんですけれど
女性が本来的に備える母性にも似たひた向きさにおいて
鴎外の舞姫や川端の伊豆の踊り子
ひいては野菊の墓
ハムレットのオフィーリアに
また林檎の樹という象徴性は
藤村の初恋とも重なりまして
(こうして列記してしまうとあたかも痛みの葬列のよう・・)
本来の主題
永続的にひとつのものに
満たされ続けることが
叶わないかのような
人間の哀しき二律背反
その背後に
一途で切なる想いがひっそりと佇む逸品
となっています。
























スポンサーサイト



テーマ:芸術・心・癒し - ジャンル:学問・文化・芸術

【 2016/01/17 04:56 】

| 文学~小説/詩/名言 | トラックバック(0) |
| ホーム |