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鴎外を想って Ⅷ
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ーー二十歳の身の浮き沈み
歓びも哀しみも知る
袖の釦鈕よ かたはとなりぬーー

〜釦鈕/鷗外

生涯を通じた作品群から垣間見える
忘れられないひとへの思慕

例えば
こちらの“釦鈕”という詩
そのワンフレーズに過ぎませんが
そこに込められた
想い。

自身も出征した戦い(日露戦争)で
戦死した
同士への鎮魂のうたでありますが
(此処でも鷗外はその死の夥しい数にも
決して
数字に済ませることはなく
丁寧な文字でその名をすべて記したといいます)

そのように
生死の狭間に身を置いていたからこそ
片側だけ失くしてしまった鈕
に自身のドイツ留学時代を重ね

失われた
二度とは戻らない日々を
愛しんで止まなかったんですね。

そして
例えば
舞姫から
下って20年後に
鷗外が執筆した
“普請中”

こちらは
かつての恋人との再会と
永遠なる別れを感じさせる物語

同時期に発表された
“桟橋”に比し
家族思いの鷗外の
牽制的作品
のようでもあり
(長く続いた書簡だけの結びつきに
終わりを告げた)
鷗外二度目の結婚に
促されるように
嫁いだ彼女を断ち切ろうとしたものか。

作中、彼女を泊まらせたホテル名は
奇しくも
かつてのエリーゼが宿泊したそれと同名
しかもふたりの会話は
ドイツ語
なんですね。

双方の書の記述をなぞって
それぞれベルリン
銀座(から芝へ)を歩いてみるなら
鷗外が意図して重ねた描写から
物語の相似性に
気付かされ

切ない
カモフラージュの裏にある
途切れない想いに
胸が熱くなります…。



※医学博士であられながら
文学博士という
研究姿勢としては寧ろ相反するような分野をして
(個人的には自然科学ならではの視点からの文学を
期待してもしまうのですが)
鷗外は
両者を混同してはならない
文学は純粋に文学でなければならない
といったような見解を
述べられていたのが印象的でした。

鷗外に纏わる文献を
紐解けば紐解くほどに
周囲の方への気遣いに溢れた
思いやりのひとであったことが
伝わってもまいりますけれど

であればこそ
所謂 舞姫論争のうちの
関係者に架かる軋轢
その不可抗力に抗することのできない
無念さに溢れる鷗外の言葉をして
枷にも似た罪悪感と終生向き合った
鷗外の苦悩を思います。

(当時、やはり医師であられた
鷗外の弟さんだけが
ふたりを応援してくれていたんですね。)











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【 2016/07/23 19:38 】

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