小さな小さな 末期の目



受験を控えた初夏
体調を崩し
ひとり検索しては、自分の生は長くないのかナ
漠然とそんなふーに思い込んでいた
季節がかつてあった。

あまりに漠然としていた所為かもしれないが
私の執着は
家族でも友人でも好きなひとでも
まして未来でもなく

教室の窓から眺める
見慣れた景色だった。

夏木立の眩いばかりの艶やかさ
この光景が
近い将来プツリと途絶える?

それが切なくて堪らなく
涙が頰を伝って
溢れて落ちた。

何でもない
ある日の断片的な記憶。

今思えば、小さな
とても小さな
想い出とさえ呼べない
ささやかな日常のひとこまに過ぎない。

けれど
あの時、あぁまで
自然を恋うた私のあの眼差しは、

初めて認めた
ささやかな末期の目
だったかと・・・。

その美しさは
なんとも愛しい
離れたくない
失わずにいたい
そんな類の心地よさを含んでいた。

騒めく教室の喧騒を
打ち消して余りある
遣り切れないほどの安らぎと
謂い様のない淋しさを湛えた樹々に寄り添う
衣擦れのような木の葉の声…。



そして今思う。
陽の光なくも
夕闇に溶ける自然
それで構わない。

僅かな風で
揺らいでいてくれれば
それだけでいい。

少し疲れたこころを擁いてくれる
自然が与える美とは本来
そうしたものかもしれない…。





















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