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イタリア~ウェルギリウス~古代ローマ/アントニウス/オクタウィアヌス/ブルートゥス~ダンテ/神曲~エイヴラム・デイヴィッドスン
夕映えのローマから・・・
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ウェルギリウス
古代ローマの偉大なる詩人です。
誤解を恐れずに言えば
ヨーロッパ文学史上最大の詩人
とも謂えるかもしれません。

ガリア地方(現在のヴィルジーリオ)のアンデスという農村に生まれ
ミラノ、ローマで天文学、医学、修辞学から弁論術に至るまで広く学び
最終的にエピクロス学派の哲学を修めた人物です。

彼の詩創作活動の時代背景をみますと
ユリウス・カエサルが暗殺され
アントニウスとオクタウィアヌスが
フィリッピの戦いでブルートゥスを破った辺り、
そんな激動の時代です。
後にその勝者オクタウィアヌスが、戦いの功績として退役軍人に農地を与えるため
イタリア随所で農地没収を始めます。
ウェルギリウスもその例に漏れず没収の憂き目にあいますが
彼の卓抜した才能から有力者の庇護を受けています。

1802年にパリで出版されたウェルギリウスの作品集。
そこに在るものは
価値基準の根底に自然を置き
自然は真実を映す鏡である
とする考え方であり
さらにその被造物を通じてあらゆる教訓を得るべきという
(現代人も今、尚強く求められている)
謙虚で真摯な姿勢です。

農耕牧畜の愛しさ、自然を慈しむ心を伝え
自然との共生を願う人間本来の立場から
透徹した眼差しでその理念を顕しています。
遥か2000年の昔、紀元前にして
日々の農作業を
農学における環境科学的観点で捉えているんですね。

遺稿として残された作品”アエネイス”には
彼の50年の人生のうちの11年間が費やされますが
未完のうちに亡くなっています。
死の直前に自身の原稿を総て焼却するよう強く望んだと伝えられていますが
皇帝アウグストゥスは、刊行を命じたそうです。
個人の意思はさておき、それは賢明な判断でした。
というのも此の”アエネイス”は
ラテン文学の最高傑作とされる一大叙事詩です。
ギルガメシュ叙事詩、神曲、ベオウルフ、ニーベルンゲンの歌、ローランの歌など
素晴らしい作品は数多く残されていますが
ラテン文学で”アエネイス”に影響されていない作品はないと
されているほどなんですね。
”アエネイス”は全12巻から構成されていますが、
(吟遊詩人のホメロスナイズされている感もありまして)
前半、主人公トロイアの王子(アエネース)がトロイア陥落後、地中海沿岸諸国を彷徨し
カルタゴの女王ディドーとの悲恋を経てイタリアに辿り着くまでを”オデュッセイア”的に
また後半、イタリアティベリス川を遡上しパラティヌスの丘にパランティウムシティ(ローマ市の前身)を建設したエウァンデルと同盟を組んで、地元の首長を破り、新しく市を誕生させる処までは”イリアス”的に描いています。

かのダンテも”神曲”において
ウェルギリウスを主人公ダンテの指導者として登場させ
彼らふたりの地獄・煉獄の軌跡を辿っていました・・。

ヨーロッパ中世には
”ウェルギリウス伝説”なるものがありまして
多くの作品でウェルギリウスがモチーフとされていました。
最近でもSF作家のエイヴラム・デイヴィッドソンが
ウェルギリウスは”魔術師”であって”詩人”ではなかったとした小説を発表し
それがシリーズ化までされているという熱狂ぶりです。

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テーマ:文明・文化&思想 - ジャンル:学問・文化・芸術

【 2012/11/01 17:34 】

| ヨーロッパ散歩(海外旅行) | コメント(9) | トラックバック(0) |
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コメント
--- 水嶋康惟さま ---

ご丁寧なご返信ありがとうございます。
水嶋さまは私なんかよりずっと
知識も洞察力も備えていらっしゃる方と拝察致しております。
こちらこそいろいろ教えて戴きたいと思っています。
これからもよろしくお願い致します☆
saki * URL [編集] 【 2012/11/09 01:53 】
--- No title ---

コメント欄に投稿した時は興奮していたのですが、あとで「おれは何自分で自分の無知をカミングアウトしてるんだ」と後悔していました。
拙い質問にやさしく丁寧にわかりやすくお答えいただきありがとうございます。

今あるヨーロッパ諸国の言語はすべてローマ帝国の公用語としてのラテン語のそれぞれの地域の方言かと思っていましたが、お尋ねしてみるものです。ラテン語すらもとはインド・ヨーロッパ語族のひとつの勢力にすぎなかったということですね。

わたしは美術が好きでたくさんよくみるように心がけているつもりなのですが、絵画彫刻建築などにおいてラテン語文化圏から西洋中世への継承が私には見えないのです。といいますか、わかりません。
積極的な継承―技術の保存といった方が良いかもしれません。
そんな訳でヨーロッパ中世の画工たちはもうローマ帝国の技術を引き継ぐ気がなかったんだなあと思い込んでいました。数ある叙事詩英雄譚もなんとなく似たものが偶然各地で発生したくらいに思っていました。そこでsakiさんのブログを拝見したものですから思わず興奮して無知をさらけだしてしまいました。

こちらこそ長々とすみません。恩恵に感謝いたします。
またお邪魔させてください。
水嶋康惟 * URL [編集] 【 2012/11/09 01:36 】
--- 水嶋康惟 さま ---

ささやかなブログ記事ですのに
丁寧に読んで下さりありがとうございます。
感激です☆
私の言葉が足りず誤解があるようでしたので少し長くなりますが(よろこんで)補足させて戴きますね。
”アエネイス”はラテン文学の最高傑作とされる一大叙事詩であるという認識がひとつあります。
また、ラテン文学で”アエネイス”に影響されていない作品は、多分ありません。
また
西洋文明(ギリシャ、ローマなど)は 古代エジプト、メソポタミアからの影響を受けいています。
ギルガメシュ叙事詩は最古の文学作品、BC2000頃の作(シュメール語版の編纂では実に紀元前3000年のものが見つかっているそうです)とされ
この古代メソポタミアの作品です。、
中世では神曲、ベオウルフ、ニーベルンゲンの歌、ローランの歌など素晴らしい叙事詩が数多く残されています。
具体的に
ベオウルフは8~9C頃で英文学最古の古英語文献です。
ローランの歌、こちらは11C、古フランス語文献。
さらにニーベルンゲンの歌、13C、ドイツの国民的英雄叙事詩です。
神曲は13~14Cイタリア文学最大の古典で当時としてはめずらしくラテン語でなくトスカーナ方言で書かれたものです。
フランス語、イタリア語、スペイン語は古典ラテン語の口語であった俗ラテン語由来のものであり
そのラテン語はインド・ヨーロッパ語族のイタリック語派でした。
一方英語とドイツ語の先祖はインド・ヨーロッパ語族のゲルマン語派ですが
ここにラテン語起源の単語、影響が大きく見られるのは
ラテン語の先祖もインド・ヨーロッパ祖語でありもとは共通言語であったらからなんですね。
そして当時ラテン語圏の文化的影響を受けていない西洋文学もなかろうかというのは
共通認識かと思われそのような総括的意味合いで記しました。
頂戴致しましたご質問ですが
基本的に叙事詩とくれば英雄譚が殆どなんですね。
ここに挙げたダンテの神曲は、形式上は叙事詩であっても英雄譚ではなく筋もありませんがこちらが寧ろ例外的なものなんですね。
スミマセン。長々と失礼致しました。
sakiより
saki * URL [編集] 【 2012/11/08 19:10 】
--- こんばんは ---

この記事を読ませていただいて初めてアエネイスの重要性がわかりました。ダンテを導くのがなぜウェルギリウスなのかも納得しました。ギルガメシュ叙事詩、神曲、ベオウルフ、ニーベルンゲンの歌、ローランの歌などをラテン文学というくくりで見るとはまったく知りませんでした。共時的に似たような英雄叙事詩英雄流離譚が西洋中世各地に登場するのはアエネイスという祖形があってのことという理解でよいのでしょうか。恥ずかしい話ですが本当に勉強になります。ありがとうございます。
水嶋康惟 * URL [編集] 【 2012/11/07 23:37 】
--- タカさま ---

はじめまして
お優しいコメントありがとうございます♪
こちらこそ訪問させて戴きます!
よろしくお願い致します☆
saki * URL [編集] 【 2012/11/02 18:06 】
--- 管理人のみ閲覧できます ---

このコメントは管理人のみ閲覧できます
* [編集] 【 2012/11/02 12:47 】
--- No title ---

はじめまして、タカと申します!
ブログの訪問記録よりお邪魔させて頂いてます。
過去記事も拝見しましたが、どれも素敵で興味深い記述ばかりでした。今後もちょくちょくお邪魔します♪

宜しくお願いします☆
ラッパ@たか * URL [編集] 【 2012/11/02 11:10 】
--- 管理人のみ閲覧できます ---

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* [編集] 【 2012/11/01 23:00 】
--- 管理人のみ閲覧できます ---

このコメントは管理人のみ閲覧できます
* [編集] 【 2012/11/01 22:41 】
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