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私的文学論Ⅱ~翻訳文学~ノーベル文学賞/ハイゼ/星を覗く人~川端康成/サイデンステッカー~ダムロッシュ~村上春樹

ーー君は僕のものでないにしても
       僕はやっぱり君のものだーー

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夜は時々良い分別を教えてくれるからね
星のことに通じると
地上のこともそれだけよくわかる・・
~星を覗くひと/ハイゼ

ドイツ初のノーベル賞受賞作家パウル・ハイゼ
ベルリンに生まれ
19世紀ドイツにおいてシラー文学賞をも授与された文豪ですが
彼もまた世間の毀誉褒貶に翻弄されたひとりでありました・・。

こちらは、このブログを通じて贈られたたくさんの
素敵なメッセージのなかで
ご紹介戴けた作品です・・。
このWEB世界で,
この小説の存在を教えてくれた
彼に巡り逢わなければ
この作品を知ることもなかったかと思うと
感謝の気持ちでいっぱいです。
そして
眠れない夜に
読ませて戴きましたので
ここにご報告致します・・。


冒頭の科白が
深く
暖かく
優しく
柔らかな時間と重なり
胸に溶けて・・・
そして
涙に変りました・・。


説明は
不要かと思われます。



**************************************



翻訳文学の大切さを
改めて感じさせてくれたそんな作品でもありました・・・。

原作者の意図さえ取り違えられているような
拙訳が散見される翻訳文学にあって
蓋し名訳・・・。

海外文学は
原書で読まない限り
翻訳に頼るしか手立てがありません。
いえ、仮に
ドイツ語、フランス語、ロシア語
その総てに精通していたとして
それでも
言葉の還元だけでは、追いつかないものがあまりに多くて・・
それは
その国の精神風土であり
政治風土・・・時に
文芸に音楽、美術・・・風習や風潮、さらに社会構造、宗教に及ぶまでありとあらゆる
人間生活の表現への了解がなくてはなりません・・
そうしたもの総てを包括して
初めてほんものの翻訳が成立するんですよね・・・。
ですから
海外文学に接する以上
翻訳文学はその通過儀礼的ジャンルと謂えるのかもしれません。
そしてさらに
そこには
原作者が選び取ったテクストへの
徒ならぬ想いがあり
また翻訳者のフィルター(感性・技量)抜きにも語れません。
こうした大変に複雑な要素を孕む
翻訳文学を対象にした
比較文学、比較文化論という視点から
その陥穽への考究がいかに為されようとも
村上春樹氏が謂われる通り
ーー翻訳はあくまで近似値ーー
でありそれ以上には、なりえないんですよね・・。
(彼はそれを意識し(すぎ)ているからこそ
例によって英語の直訳のような文体なのかナ
なんて思ってみたりもしています)
で、ノーベル文学賞にからむ文学は
洩れなく翻訳文学といって過言ではないようです。
というのも
英語、スウェーデン語に翻訳されていないものは
その選考対象にすらならないのですから。

ノーベル賞の必須条件は第一に
”優れたスウェーデン語に翻訳されていること”
なんて
実しやかに囁かれるのも強ち外れてはいないんですよね。

文学と翻訳の関係では
川端康成氏が
訳者のサイデンステッカー氏へ向けたメッセージ
”私が戴いたノーベル賞の賞金の半分はあなたが受け取るべきです”
は、象徴的なエピソードだと感じています。

日本では、明治維新
学術文書に始まった翻訳文学ですが
往時の国家事業とも謂えるこの明治期の翻訳をして
それが現代の日本語を創ったと謂われるのも解らなくはないんですね。
漱石、鴎外を初めとして文豪とされる多くの優れた日本の文学者たちは
西洋文明をも広く学び見識を高めました。
外国文学の翻訳は近代日本文学の形成に
測り知れない影響を齎し
日本の近代文学は西欧文学をモデルにして初めて
独自の文学世界を構築できたとも謂えるものでしょう・・。

かのダムロッシュは
世界文学とは、そのまま翻訳文学である
とまで言い切っています。

”良い翻訳で豊かになるものこそ世界文学”だと。
彼曰く
”翻訳して通じなくなるものは、国民文学、地域文学でしかない”
ということらしいんですね。
確かに多くの文学が
翻訳ゆえ
後世に残ったこともまた事実でありましょう。

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訳されて尚豊かである書
それが
世界文学の世界文学足る所以かもしれません・・。










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【 2013/02/05 18:34 】

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