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私的レ・ミゼラブル論Ⅲ~ユーゴー~ヴォルテール/ルソー
ーー最後,唯一の苦難とは
      愛する者を失うことーー

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ユーゴーの大作レ・ミゼラブル
作品の背景は
ナポレオン帝政の終わりの始まりから
王政復古期を経た後・・辺りまで。
最中の革命とは
労働者の怒りがピークに達した6月革命
労働者層の闘争のことですか
(実際作品に描かれた場面は1832年のもの)
ユーゴーの意図
その真意が端的に表れていたのが
この革命シーンであったかと
思うんですね・・

そして
この戦いの中で浮彫にされるのが
教育も施されず
手探りで生きてゆく他手立てのなかった若い命が
革命の露と消えてく姿・・・

政府側に回った国民衛兵隊の銃弾が飛び交うもと
そのバリケードの中に在って
少年ガヴロッシュに謳わせた
心の叫びとは。


On est laid a Nanterre,
C’est la faute a Voltaire
Et bete a Palaiseau
C’est la faute a Rousseau

Je ne suis pas notaire,
C’est la faute a Voltaire,
Je suis petit oiseau,
C’est la faute a Rousseau.



歌中のNanterre、Palaiseauは
往時パリ郊外のスラムの名
そして
ここに暮らす自分たちを自虐的に
laid、bete・・etc.であると語らせています。
こちら
無徳であり無識であることのメタファなんですね

成熟した市民の暮らす街ほど暴動は起こり難いものです
それは
その戦いが粛々としていればしているほど
正当性が認められ易いと知っているから。
けれどパリ・コミューンの構成員たちは
そうした初歩的判断力さえ
持ち合わせていなかった。

そして
フランス革命の原動力となった
ヴォルテール(反キリスト教的自由主義)や
ルソー(自然主義)の思想にこそ
民衆の無徳、無識の原因があると謳わせている・・。

ヴォルテールやルソーらのそれは
ひとつ読み誤れば
民衆の心のベクトルが
あらぬ方向に向かってしまう類の繊細な書物であります。

著者の意図を正確に受け取れず
誤った解釈がひとり歩きすることが
如何に危険であるか
そしてそれは無用の衝突さえ誘発してしまうという
一知半解の恐ろしさを描出しているんですね。



ジャヴェル警視をあのような悲劇的結末に導いたのもまた彼であり
古くから偉大な作家、思想家たちが訴え続けてきた
法制度への懐疑、或いは死刑制度への忿懣も
私たちに投げかけています。
また、規律無き自由、教育環境の不備、不定住性(スラム貧民層)
そうした悲惨が文明の対極にある忌むべき現実である
と断罪したのが
この作品”レ・ミゼラブル”であったんですね。

そして彼は非文明的彼等が
如何に”共和政”を声高に叫ぼうと
理念なき革命運動は
文明化社会への単なる暴挙(テロ)にしか成り得ないと諭し
留めとしてガヴロッシュを
エポニーヌを痛ましくも銃弾に倒します。
(最後,唯一の苦難とは愛する者を失うこと・・)
それは
智慧無き暴動は犠牲を拡大させるのみという
強い抗議の顕れといえましょう。

集団心理の恐ろしさ
和の原理の盲点が
どれほどの哀しみを招くかという暗示です。

パリがコミューンであることは認めても
パリ・コミューンは認めないその理由は
ここにあったんですね

正しい教育こそが
真の共和政を拓く道であると
ユーゴーは考えていた・・・
ですからジャン・バルジャンに
コゼットを苦境から救い出させ
幸せに生きるチカラを施させた
このプロセスにこそ
ユーゴーが推奨する社会の役割、私たちの在るべき姿の
プロトタイプがあると受け止めてよいかと思うんですね。

ユーゴーがパリを視察し
貧困に喘ぐ人々に手を指しのべ
やがて財団組織にし
引いてはヨーロッパ全土に慈善事業を拡大していくという
彼の一貫した社会福祉活動の軌跡に
ユーゴーの人間性
その愛の鼓動が聴こえてくるようです。

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絶対正義など在り得ない
であるならば
私たちひとりひとりが
法律や常識に縛られずに
対象の本質を見極める能力を培い
育てて行かなければならないと
ユーゴーは教えてくれていたんですね・・。











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【 2013/03/11 18:24 】

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