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旅の記憶/色彩に誘われて 断章Ⅰ~ポルトガル~ヴァスコ・ダ・ガマ


歴史を見詰めてきた聖なる青に
純白の雲が浮かぶ
この穏やかないちにち
私はポルトガルの田舎町に佇んでいた

パステルベージュのなだらかな丘陵に囲まれた小さな町
それは
人影もまばらな小高い丘の上にあった

そにへ続く細い路地は幾度となく折れ曲がり
僅かな傾斜を刻む古びた石畳と白壁に守られながら
歩みを進める
そして
辿り着いた場所には
固く閉ざされた鉄の扉

濃い緑が印象的な
そのドアの脇に架けられたプレートには
”Vasco da Gama”の文字
彼が暮らしたというこのカーサは
見えないヴェールにも似た
或る雰囲気に包まれていた
”escritorio”を鑑みるに
彼がここに活動の拠点を置いていたとすることも
想像に難くない

あまりに有名な彼の業績(現代の価値観では語れないものも含めて)は
記すまでもないけれど
ただ
此処を訪れたあの日
あの場所で確かに感じたもの
それは
遙かなる中世の息吹
その
夢の跡だった

そうあった理由が
(世界史の授業なんかではきっと教えることはないであろう)プレステ・ジョアン伝説
そのせいだということも分かっていた

東方の三博士の末裔とも
見做されたジョアン王が治めるという
”幻の王国”
そう
彼らは夢見たのだ
その王国を探し出しあの構想を実現することを。

それは
大航海時代においての
彼らの
最終目標でもあった
(文献を紐解けば
それが紛れもない
事実であったことが伝わってくる・・)

十字軍が苦戦し
方策尽きたかに見えた
往時ヨーロッパの人々にとっての
救世主的存在・・。

追い求め続けられた
未だ見ぬimaginary王
プレステ・ジョアン。

時が止まったかのようなこの田舎町には
そんな中世の夢が占拠する
異質の空間が広がっていた

そして
私たちが求める世界観とも
決して無縁ではない
ともすれば見失ってしまいそうな祈りも
そこにはあった

丘陵を渡る乾いた風が
私の髪を揺らし
柑橘系のフルーティな空気が耳元に遊ぶ
私を
この扉の先に誘う香りだ

自分が誰で
どこの国から
何のために訪れたのか
そんなことすら
どうでもよくなるような・・
中世の伝説の狭間に迎え入れられ
歴史の空間に戯れる
cool‐headedに向うも有り
ただ身を任すも有り
旅の醍醐味は
こんなところにもある
どこまでも軽やかで自由だ
けれどその実は
深みがあって重厚
それでいてとても優しいのだ

もうひとつの人生がここにある

その土地特有の
異国情趣に抱かれる瞬間(とき)のまにまに

私達のユートピアはどこでもない
その胸の
奥深くに・・あるもの

美しい時間だけが
音も立てずに
静かに
降り積もってゆく・・・

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テーマ:芸術・心・癒し - ジャンル:学問・文化・芸術

【 2014/02/04 21:57 】

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