FC2ブログ
スペインアルハンブラ宮殿Ⅳ~ヘネラリーフェ庭園/水の離宮~サクロモンテの丘/アルバイシン地区/ロマ/ジプシー/ジェノサイド/フラメンコ/チャップリン/~シェラネバダの雪解け水
アルハンブラ宮殿の秀麗な装飾は(モロッコやスペインのムスリムを示すモーロを語源とした)モーロ美術と呼ばれ、かのクルアーンにも記述があるほどで
対する外観はと云えば、これがまた寂寥感漂う”侘寂”にも通じる美意識で貫かれているんですね・・このギャップが人々を魅了して止まない理由のひとつであろうかと。そして内部装飾創造のエネルギーが精神性由来のものであり、また外観のそれが、如何に権威主義的でなかったか、もっと謂えば、目に映る富に重きを置くことなく、精神的(宗教的)価値にこそその総てを見出すといったような、イスラム文化爛熟期の繊麗な美学に裏打ちされたこの宮殿は、紛れもなくイスラム建築の最高峰でありスペインの至宝、人類の遺産のひとつと言えるでしょう。



私たち日本人にとっては、水と緑は半ば空気にも似た近しい存在でありますが
イスラムの民は砂漠の民 、オアシスが象徴するような湧水と植物に根源的な憧憬をもつ民族・・それを裏付けるようにアルハンブラ宮殿内には水と緑が随所に配されています。
王宮の2つの水のパティオはもとより、糸杉の並木道に城内の遊歩道を経て谷を隔てた向側の丘に立つ”ヘネラリーフェ庭園”
14世紀初頭ムハンマド3世によって造られたアルハンブラ宮殿東側の庭園です。
イスラム風のアーチ型の門に 、噴水や池、水の階段
辺りには薔薇を初めとして所狭しと咲き乱れるブーゲンビリア・アリッサム・スターチス・ローズマリー・セイジ・ミントなど数百種にも及ぶ草花やハーブが彩りを添えます。

120522_0024~04

王の政務の合間の憩いの場、王室のプライベート空間とされた”夏の離宮”は
アセキアのパティオに観るように
回廊の内側の池に噴水のアーチが構成され
シーズンにはまた季節の花で埋め尽くされます。
そしてここでもシェラネバダ山脈の雪解け水をふんだんに使った水の競演が繰り広げられ
”水の宮殿”と呼ばれるに相応しい古城の横顔を覗かせます。

120522_0053~02

※こちらに架けられた石造りの水道橋で、相対の丘の王宮に水が送られています。
モザイク模様の散歩道は伝統的なグラナダ様式。
白石は、グラナダダーロ川から、黒石は、グアダルキビール川から集められたといいます。



リンダラハのバルコニー、マチューカの中庭、その庭園の背景に広がるのはサクロモンテの丘
120522_0019~03

ベラの塔からアルバイシン地区の褐色屋根に白壁という統一感のあるグラナダの街並みが一望できます。
rampartのフォルム、確かに城塞には違いありませんが
トレドのそれに比べるとその開放感はそのまま癒しへと変わってゆきます。

このアルバイシン地区は、ダーロ川を挟んで、アルハンブラ宮殿の西側にあたり
8世紀以降中世ムーア人の統治時代には多くのアラブ人が住んだという町
所謂、日本でいう城下町ですね。

アラブ式のハンマームなど当時の建築様式があるがままに残るエリアです 。
グラナダ考古学博物館やモスクのあとに建設されたサン・サルバドール教会に
イサベル1世とフェルナンド2世の遺骸が眠る王室礼拝堂
16世紀から建設が始められたスペイン・バロック建築の代表の1つカルトゥーハ修道院・・・。

白壁の家々に迷路のように入り組んだ路地
サクロモンテの丘には、歴史を滲ませる石畳に名残りの洞窟住居が立ち並び
グラナダ最古のイスラム時代の表情を私たちに魅せます。
このエリアは
インド北部をルーツとする放浪の民ヒターノ(ジプシー)たちの居住区
彼らのタブラオでは、夜ごとフラメンコのショーが繰り広げられます
フラメンコの原型はロマ族の舞踏でありそのままここアンダルシア地方がフラメンコ発祥の地。
ロマと云えば、かのチャップリンもロマ出身なんですよね。ユダヤ人迫害の陰にクローズアップされることは少ないのですが、ヨーロッパにおけるロマの歴史はジェノサイド、差別、貧困・・
その憂愁が滋養となったペーソス溢れる演技なればこそ彼のそれは人々の心を揺さぶったものでしょう。
そしてまたスペインとくればフラメンコといったイメージを持たれている方も多いかと察せられますが
実際スペイン北部では、そのように認識されている地元住民はいません。
あくまでこのアンダルシア限定です。
キリスト教徒、イスラム教徒、ユダヤ教徒にヒターノという複雑に入り組んだ文化圏に、不条理な歴史を総括した芸術、それが生き抜く情熱に語り尽くせぬ哀惜を刻みこんだフラメンコとなって在るのでしょう。
こうしたジプシーたちの佇む丘から眺めるアルハンブラ宮
栄耀栄華の幻
かつて隆盛を極めたイスラムの精神が染み込んでいるような芳醇なベージュの
その切ないまでに慎ましやかな外観シルエット
バックには真白い雪を頂くシエラネバダ山脈
富士山よりも標高が高いという最高峰ムラセン山を包括する
シエラネバダの峰々の壮観さ。

シェラネバダ0007

通年雪で覆われたシェラネバダ山脈を背景に、グラナダの丘に建つ美しき王宮アルハンブラ
そのコントラストは 、ヨーロッパでも比類なきランドスケープであり
真の美しさとは、ある一定の哀しみを含んでいるということを確信した地でもありました
そしてシェラネバダ山脈の向こうには、遥かなる地中海・・・

ーーThe soul of man has been given wings and at last he is beginning to fly.ーー
~映画 独裁者最期の演説より

ブログランキング・にほんブログ村へ


※グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシンは、ユネスコの世界遺産に登録されています。
また、このシェラネバダ山脈は、ヨーロッパ最南端のスキーリゾート地であり
近年では、スキーのワールドカップが開催されたりもして知名度を上げています。
裾野にはグラナダ、マラガ等名立たる都市を抱えるこのシェラネバダですが、
実はこの”シェラネバダ”という名を冠した山脈は
アメリカ合衆国カリフォルニア州のそれと、メキシコベネズエラのシエラ・ネバダ・デ・メリダ、コロンビア北部のシエラ・ネバダ・デ・サンタ・マルタなど世界各地にあるんですね
”シェラネバダ”は”雪に覆われた”という意味のスペイン語
ですので元祖はココかと・・・。





関連記事
スポンサーサイト



テーマ:スペイン - ジャンル:旅行

【 2012/10/09 21:23 】

| ヨーロッパ散歩(海外旅行) | コメント(0) | トラックバック(0) |
<<チャップリン/独裁者最後の演説~歌劇「ローエングリン」第1幕への前奏曲~The Great Dictator | ホーム | 3/4大バイオリン協奏曲~ベートーヴェン、メンデルスゾーン、ブラームス~チャイコフスキー五嶋 みどり動画視聴ヴァイオリン協奏曲ニ長調 作品35~トルストイ/クロイツェル・ソナタ~プーシキン/オネーギン>>
コメント
コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://saki2000.blog.fc2.com/tb.php/63-47f1ba9f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
| ホーム |